企画調整機能は「新たな都市課題」に直面する時に、その機能を発揮すべきものです。縦割り部門別に進めていた事務事業を横断的に、かつ総合的に取組まないと、新たな都市課題に対応できない。その新たな都市課題を反映しない総合計画は、世の中の変化に目をつぶった羅針盤なき航海となるでしょう。いま、当NPOでは企画調整機能研究会を立上げ、NPO会員以外にも意欲ある研究者の方々にご参加いただき、基礎研究を進めています。檜槇貢さんもこの研究会のメンバーで、佐世保市での活動事例を投稿いただきました。
佐世保市第7次総合計画への意見
2021年12月
審議会委員:檜槇 貢
(長崎国際大学特任教授/元佐世保市政策推進センター・センター長)
1.最初に
・総合計画の策定・公表以降、新型コロナによるパンデミックが発生し、現在まで続いております。そのなかで、ご質問のような「問い」への答えはとても難しいと感じています。
・佐世保社会への保健政策を中心とした臨時的政策が総合計画に変わって登場させることがあってもよかったのではないかと思うくらいです。その対処があって、その上で基本計画の目標、政策の方向性や姿勢等が議論の対象にされるべきだと思っています。現実はそのような動きではなかった。
2.2年間の総合計画推進
・策定後、4年計画の基本計画の中間年になりました。2年間の政策面の総括をしてもいいのではないでしょうか。コロナ禍のインバウンド直撃が行政サービスをかく乱しているでしょう。健康・福祉・医療と地域経済支援が一体的に動き、部局単位の政策が動けなくなっているのだと感じています。
・住民等の移動を抑えられたために、佐世保市としての政策展開への不調を明らかにしておくことが必要なのではないでしょうか。対面サービスからリモート対応への転換。長崎市、福岡市、東京圏との関係が厳しかったこともあるでしょう。
・それらを市民目線で公表し市民と行政のエネルギーをつなぐことが求められるのではないでしょうか。まずはコロナ禍における(ウイズコロナの)市政の公表が必要です。
3.人口減少と機能縮減への対応
・佐世保市の人口変動と機能縮減に対応する政策変化を俯瞰的にとらえることが必要ではないかと思っています。
これからは若年人口の行政サービスの単位としての小中学校の圏域、包括支援センターの対象地域、地区自治協議会の対象地域、都市再生のエリア等を一体として把握することで、政策調整が進められるのではないかと思います。いずれの圏域、地域、エリアも仮置きの状態ではないでしょうか。全庁的角度からの総合的対応が必要なのではないでしょうか。
4.分野別計画の総合化
・計画書172頁から176頁にわたって、「主な分野別計画等の一覧表」が掲載されています。≪しごと≫≪ひと≫≪まち≫≪くらし≫≪行政経営≫の基本計画区分に従って整理されていますが、この総合計画ではこれをどのように位置づけ、総合化しているのかを示しておりません。計画書には計画期間が示されていますが、総合計画とは別個の手続きとロジックで計画化されているように思われます。これをどのように扱うのか、総合計画審議会サイドでも検討すべきではないでしょうか。
5.IR誘致後の佐世保市の姿
・来年の8月にはIR誘致が決まるというスケジュールが公表され、市内でも誘致に向けた動きが盛り上がりつつあります。これまではハウステンボス事業地を対象とした長崎県および九州経済界等との対応でしたが、総合計画の観点からのIR都市佐世保像とその影響評価を行うことが必要ではないでしょうか。