公開研究会・横浜の鉄道事業

太田浩雄氏『横浜の鉄道事業について』公開研究会

2022216日午後530分から8

なか区民活動センター第1研修室

参加者 対面で10名(内、NPO会員外3名)、リモートで4名、計14名(講師以外)

 

横浜市の鉄道事業専門家の太田浩雄さんの講演内容は、ひさしぶりの対面形式によることもあり、かつ内容の豊富さと迫力で圧倒された。これまで知っているようで知らなかった横浜市の地下鉄からみなとみらい線に至る、鉄道事業の計画と実践の「現場の凄さ」を感じた。これだけ正直に当時の苦労話をしていただいたので、これからのテープ起こしが楽しみであるが、内容が豊富すぎて、これを補完する調査研究の必要性を強く感じた。つまり、当事者では「当たり前の前提」が第三者にとってはそうでないため、語られた話の重さが計り知れないことがある。一つはっきりしていることは、計画者の大胆な発意がなければ(例えば、みなとみらい線の駅舎で深く広く掘り大空間を確保すること)、大胆な駅舎デザインや都市デザインも成立しなかった、といえる。「鉄道版田村明」を彷彿とする人物であった。(田口)

 

関根龍太郎さんの感想

 

  昨日の太田浩雄氏の研究会『横浜の鉄道事業について』、リモートで参加しましたが、大変面白く、また、大変勉強になりました。非常に意味のある研究会だったと思います。準備された方々、お疲れ様でした。

 ただ、電波の具合が悪かったせいか、音声と画像が途切れ途切れで続けて聞くのはしんどく、始まって早々席を外し、1時間ぐらいして復帰したところ、地下鉄みなとみらい線の駅の話で、以前から素晴らしいと思っていた地下鉄駅建設の事情の一端にふれることができました。

 以下は、そういう断片的な形で参加した私の感想です。

 太田さんは、役人の枠にはまらない役人で、語り口はざっくばらんで荒っぽいところもあります。でも、こういう方だからこういう行動ができたのかと思い、人柄、話し方、発想と太田さんの業績は切り離せないと感じました。太田さんの発言証言をどう生かすかということについては、工夫が必要だと感じました。

 私が価値があると思うのは、あの時代の横浜市で、太田さんのような型破りの役人が活躍し、業績を残せたということです。不十分な参加のし方とそこで得た情報だけで断定していいか問題はありますが、私見では、担当者が、個人的な判断も含め、公権力がやるべきことをやった結果、横浜市に正の遺産が残されたということではないかと思います。

地下鉄みなとみらい線に、「モノの輸送」から「観光の輸送」という将来を読み取ったのは、データだけからはできなかったことです。現在になって振り返ればその未来予測は当たっていて、デザイン性の高い駅舎や女性客を念頭に置いたトイレ整備は、時代を先取りしたものになりました。私は、横浜みなとみらい線地下鉄駅のデザインは世界レベルのものだと思います。また、東京では実現できないものではないかと思います。

 こうした、役人らしからぬ役人が比較的自由に権力を行使し、鉄道事業者と監督官庁の役割の本質を見極め、鉄道事業者に応分の負担を求める一方、市としてやるべきことはやった。これは、田村明さんの、開発事業におけるスタンスと重なり合うものです。聞いていて、一見異色の役人だったようにも見える太田さんは、正に、田村明の正当な後継者だと感じました。

 私は、役人が官僚主義に陥るのは当然のなりゆきだと思いますが、それを何らかの形で突破したところに、やはり素晴らしい役人の業績は残ると感じています。それが可能になるためにはいろいろな条件が必要ではないかと思います。そこに一番興味を感じました。

NPOとして、さらに掘り下げて、田村明につながる道が明らかにされるといいと思いました。10年前の私なら、自分でやろうという気が起きたかも知れませんが…。また、これまた役人らしからぬ運輸省官僚だった亡くなった私の父と、太田さんの話を突き合せたら面白かっただろうなどという空想も浮かびました。

20220216NPO講演会資料.pdf
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